劇団猿面劇団猿面第20.5回公演 劇場風景

STAGE20.5

「猿面ふれあいSHOW」
2022年11月5日/6日

↓ END


猿と旗

いらっしゃいませ。

このページでは、2022年11月公演の様子をお届けします。
メンバー達の公演後記や舞台写真もあります。
どうぞごゆっくりご覧下さい。

仕込み風景 公演ウラ話 公演後記 舞台写真


仕込み風景

11月5日 小屋入り 公演初日

ようやく公演実現の日がやってきました。
コロナウイルスの流行によって、公演が出来ないという未曾有の事態に見舞われて以来、この日をじっと待ちながら、地道に稽古だけを続けてきました。
今回の会場は千葉市美術館です。
いつも猿面がお世話になっている千葉市南部青少年センターは、公演の日程を決める時点で、まだマスクをしなくてはならない規制がありましたので、出演者がマスクを外して公演できる場所を探し、美術館内のワークショップルームを今回の”劇場”に決めました。

猿面は、2006年に千葉市美術館講堂で公演しましたが、かなり昔の事ですし、美術館は2020年にリニューアルされています。
ワークショップルームはその際に新設されたスペースです。初めての利用のため、わからない事も多々ありましたが、その都度、丁寧に対応していただきまして、おかげさまで公演を実現する事が出来ました。
特に担当の方には、大変お世話になりました。
ありがとうございました!


今回は小屋入り当日が公演初日です。
いつもなら、小屋入り後、初日を迎える前の仕込みに2日ほど費やしますが、今回はいつものような大道具や照明の作業はありませんので、数時間で仕込みを完了しました。

衣装や小道具、鏡や進行表など、必要な物を使いやすい場所に配置します。


お手伝いに駆けつけてくれた丸ちゃん。
しばらくご無沙汰でしたが、今年は稽古見学にも来てくれ、再会を喜び合いました。

2日間、朝早くから公演を手伝ってくれました。
ついたての下のすき間から足元が見えてしまうのを、プラダンで隠してくれているところです。

いちいちお願いしなくても、良きように調整してくれる丸ちゃん。痒いところに手が届くスタッフさんがいてくれると、本当に助かります。

下手側では、野上が衣装をセッティングしています。
今回、誰よりも衣装が多かった野上。下手側にも上手側にも衣装を配置していました。
野上は、忘れ物にかなり怯えていました。
いつもなら小屋入りは本番の数日前なので、仮に忘れ物があっても翌日で間に合いますが、今回は一発勝負です。
土曜の朝に忘れ物をしたら、午後からの本番に間に合いません。
ピラピラした服とか、キラキラした腰巻きとか、そんじょそこらに売ってない物ばかり、コンビニで買えば済む忘れ物じゃない、と、思うと恐ろしかったそうです。
衣装に加えて、靴も数足、パソコン、ギター、タンバリン、カツラもあるし、猫の耳とか尻尾とか、てんこ盛りだった野上ですが、忘れ物をせずに済みました。
怯えて慎重に準備したのが良かったらしいです。


ワークショップルームは、舞台のような段差のない、多目的に使えるスペースです。
客席となる椅子を並べる事で、舞台空間との境界を描きました。
しのだの直感と希望を元に、アシンメトリーな丸みを帯びた形に並べました。
ちょこんと座っているのは、NANAさんです。すっかり大人になった”NANAちゃん”が、久しぶりにお手伝いに駆けつけてくれました!

立ち位置を確認中です。
窓の向こうに亥鼻城(千葉城)が見えています。
ロールカーテンがないほうが明るいし、お城も見えるしステキかな?と、検討されましたが、背景がうるさく感じるのと、逆光になってしまうので、公演中はカーテンを下ろす事にしました。

この後、ゲネプロをして、音量や立ち位置などを調整し、本番に備えました。


公演ウラ話

15:00開演

待ち続けた時 届けたい思い
3年ぶりの劇団猿面公演「猿面ふれあいSHOW」 いざ、開演


司会進行 代表

曲と曲との繋ぎで進行役として登場した我らが代表。
きちんとお客様に向き合って話し掛けるのが役割でしたから、原稿を読むことはしませんでした。

今回は、お客様と近い距離のため、声の大きさや強さ、話す速度など、聞きやすいように工夫を重ねて来ました。

演出シノダから話し方にダメ出しされ、代表本人も強くなり過ぎないように、と、気を付けてベストを探りました。

気取ったり、かっこつけたりするのではなく、猿面にとって大切なお客様方に、心を込めて語りかけてくれればいいだけなんだ、というのが、シノダの要望でした。

「いつもの、丁寧に人と話している時の綾ちゃんでいいんです。伝えようとしてください」
と、シノダ。
代表の笑顔は、猿面の自慢です。
劇団の太陽と言われる代表は、光り輝く笑顔で、「ふれあいSHOW」にふさわしい司会ぶりでした。

本番前も、廊下の突き当りで練習中。

この時は、鬼の演出家が直前で話す内容を追加したので、必死で反復練習していました。
状況に合わせた追加は臨機応変の練習です。この経験がきっと芝居の時にも役立つ事でしょう。と、こんな時こそ密かに役者を鍛えるシノダです。


受付の風景

久里子さんも2日間、お手伝いに来てくれました。
10月に稽古見学にも来てくれましたし、久しぶりの公演参加です。
NANAさんと一緒に仲良く受付を担当しました。
今回は、丸ちゃん、久里子さん、NANAちゃんが終日手伝ってくれて、出演者達は心強かったです。

スタッフ団員である受付親分のマツは、今回はお客様として観に来てくれましたし、楽日のバラシには、MASAHIKOさんと若者T君が参加してくれました。
未成年だったT君は、いつの間にかハタチになっていました。
NANAさんといい、T君といい、劇団に関わってくれた子ども達が成長し、「大人になったね」と、感慨ひとしおの猿面達です。
どのメンバーも長い間会わずにいたとは思えないほど、昨日も会っていたかのように、登場した瞬間からしっくり馴染んでいました。
公演時に、当たり前のように集まってくれる仲間のありがたさを痛感しました。

そして、異例の風景ですが、今回は役者も入口に立ってお客様をお迎えしました。
久々の公演であり、スタッフさん個人の状況にも変化があったかもしれませんので、もし、受付係をやってくれる人材が見つからなかった場合は役者達が自ら受付に入るつもりでした。
幸い、頼れる受付嬢は確保出来ましたが、今回の特別なショー公演に来てくださった、猿面にとって”特別なお客様”には、お顔を見て感謝を表したかったので、開演前から表に立ちました。
「いらっしゃいませ」と、居並ぶ役者達。
勢ぞろいに驚かれるお客様が多かったので、極力分散して、つつましやかに「いらっしゃいませ」をする役者達でした。


猿面マスク

出演者が着用していた猿面マークのマスク。
野上が布用絵具で染めた、洗濯しても落ちない猿マークです。
公演中に使えるようにと、野上が出演者にプレゼントしました。
試作品は、不織布マスクに直接染めたそうですが、使い捨てになってしまうので、出演者用はアイロンで接着できる布に染めたそうです。
(不織布マスクは、受付の久里子さんにプレゼントしていました)
各々、自分の好きな布マスクに猿マークをアイロンでつけて、完成させました。
劇団を愛する野上公房としては、久しぶりの公演にあたり、猿面ならではの物を作らなくては気が済まなかったみたいです。

おそろい衣装の、猿のTシャツも皆の手作りです。
野上がデザインした一つの型紙を使い回し、出演者それぞれが市販のTシャツに猿の図柄を縫い付けました。
Tシャツもマスクも、申し訳ございませんが販売予定はありません。
欲しいという嬉しいご要望をチラホラいただいたようですが、これからもこの先も、何も販売しない、お金儲けが出来ない劇団猿面です。


11月6日 楽日

今回の公演はお天気に恵まれました。
ワークショップルームと同じ階には、美術品の常設展示室がありました。

静かな美術館に曲や声が響いて、ご迷惑になるのでは、と、案じていましたが、問題なかったそうです。
壁もお洒落なワークショップルームです。
シノダはきれいなこの壁を本番中に見せたかったようですが、音漏れを軽減するため断念し、カーテンを閉める事にしました。
そういえば、代表は、ワークショップルームの事を、ワークルームショップ?と何度もしつこく言い間違えて、野上に突っ込まれていました。


朝の集合風景です。
残り2公演を残すのみとなりました。
いつもなら、日曜日は昼の公演1回のみですが、今回は、日曜日も2回公演でした。
初日と違ってゲネをしないので、時間に余裕があるかと思いきや、公演準備をして、毎回恒例の動画版劇場風景を撮影していたら、あれよあれよと開場時間が近づき、案外慌しい本番前でした。

動画版劇場風景は、後日YouTube公開します。どうぞお楽しみに。

ショーでは、曲の合間に色々な出し物?をやりました。

こちらは、脳トレ体操の、指の体操です。
お客様にも挑戦していただきました。
単純ですが、なかなか難しいので、お手本をお見せするはずの代表も上手く出来ないのが当たり前でした。
本番では代表の成功率が高かったので、「代表が成功すると面白くない」
と、シノダは影で残念そうでした。
ショーコも隣に控えて代表をサポートしました。

代表とショーコは、このほかにも手品を披露しました。

手品はシノダのリクエストでした。
楽しそうなので、何でもいいから簡単な手品をやって欲しい。と、突然言い出したシノダ。
楽しそうなのは確かなので、文句も言わずに動画サイトで出来そうな手品を探し、練習した代表とショーコ。
二人が思いのほか、しらばっくれて、いけしゃあしゃあと手品をやるので、シノダは喜んでいました。

野上の着替えのための、ハイスピードなお尻フリフリダンスにも付き合わされ、色々新たなチャレンジをした二人です。


12:00 開演
お客様との幸せな時間が、今日も始まります。

殆どのお客様がアンケートを書いてくださり、猿面一同、心底感謝しております。
ありがとうございます!!
たくさんの感想や応援のお言葉を頂戴し、大変励みになります。特に今回は、3年ぶりにお客様の声を知る事が出来、いつも以上に嬉しいアンケートでした。
このアンケートによって、お客様との繋がりを実感しました。これこそが今後の、何よりの活力になります!


今回のショーの構成は、演出シノダです。
ダンス振付担当の野上と相談して、過去のダンスや歌から選曲しました。
猿面のダンスは、シノダの脚本に合わせて野上が振付けています。
シノダの要望に沿ったり、野上の好みに走ったり、皆のレベルに合わせたりしながら振りを決めています。

過去の公演において、ダンスや歌では野上が最多出演ですから、今回のショーでも野上の出番が連続する事になりました。
「僕ばっかりやるのは良くないから、僕抜きで、3人だけで何かやってください」
と、要望した野上。
女優チームが1曲まるまる担当してくれれば、全とっかえの着替え時間も確保できます。
そんなわけで、過去の劇中の曲ではない曲を、ショーのために追加しました。
この曲を選んだのは、シノダです。
3人並ぶならキャンディーズ♪という昭和脳です。
「キャンディーズの動画、たくさんありますから探して覚えてください」
と、面白がって丸投げしたのは、野上です。
わかりにくい振付は、野上も動画チェックして軽く指導していましたが、基本女優さん達だけで振付を分析し、覚えました。

必死で歌って踊る3人に、
「痛々しくならないように!あれ?それとも痛いのを狙うんですか?」と、ドS全開の野上。
センターを務めるシズカさんに、
「ランちゃんですよ!もっと出してください」と、ランちゃん好きゆえに、手厳しくなるシノダ。
「何を出せって言うのよ~」、と、ザックリ過ぎる要求に困っていたであろうシズカさん。

やがて、本番が近付いたある日の稽古で、
「はけ方(退場の仕方)が辛気臭い!スキップで帰れ!嘘じゃない笑顔でスキップしながらはけてください!」
と、シノダから注文されました。

代表とショーコの動きがなかなか合わなかったり、
代表の音程が微妙で、「え?もしやハモってるの?いやいや代表にそんな芸当は無理なはずだぞ」と混乱させられたり、
シズカさんが必死過ぎて顔が泣きそうだったり、
と、さまざま苦労しましたが、本番ではお客様の大きな手拍子に支えられ、年齢を超越したキュートなキャンディーズになっていました。
笑顔のスキップは、お客様の笑顔を誘い、「可愛らしかった」と好評でした。

水玉スカートも手作りしました。あらためて、今回は手作りが多かったですね。
稽古風景にも載せましたが、格安の布をショーコが買いに行き、代表とシズカさんに縫い方を教えました。
「どうするの?こうするの?わかんなーい」
と、困っていた代表とシズカさんですが、どうにかこうにかして縫いました!


もう1曲、劇中での曲ではない、ショーのための曲がありました。

野上が弾き語りでお届けした曲です。
今回、弾き語りは2曲でした。
1曲目は「チェリーの事情 再演」での曲ですが、2曲目はシノダがショーに合わせて選んだ曲です。
曲のラストでは、他のメンバーも登場して一緒に歌いました。
ギターは独学の野上。
稽古も出来なかった巣ごもり期間にギターを弾く事が増え、それがショーでの弾き語りにつながりました。
野上は、ひたすら練習を重ねて来ましたが、お客様の間近でギターを弾くのについてはかなり緊張していました。

野上は芝居の本番ではあまり緊張しません。ここまで緊張するのは彼にしては珍しい事です。
「家ではしくじらないのに人前だと危ない~、後ろ向きで弾きたい」と、怖じ気づいていた野上。

ご覧の通り、小屋入りしてからも練習していました。
野上の向こうでは、代表もトークの練習中です。
「オレ如きが弾き語りをやるなんて身の程知らずだ、やめておけば良かった」
と、思った事もあったそうですが、やると決めたからにはやり遂げるのが男一匹野上です。
例えド下手でも、シノダがこのたび選んだこの曲を伝えたい、という欲望が勝ちました。
野上本人が一番心配していた弾き語りでしたが、お客様から沢山のご好評をいただきました。
涙を流してくださった方も少なくありませんでした。
野上は思いもよらない反響に驚いていましたが、もちろん大変喜び、安堵しています。
つたない弾き語りを真剣に聴いてくださった皆様、ありがとうございました。

終演後、受付にこっそりこんなものが飾られていました。
野上のファーストアルバム?です。
野上が友人のために自分で作った弾き語りのCDです。
タイトルは「ろくに弾けない弾き語り」ですって。自虐しているわりに、2枚組、合わせて22曲収録されています。
外出もままならない期間、こんな遊びをしていたんだとか。

コロナが無ければ、野上がここまでギターを弾くようにならなかったのかもしれません。

本番で使ったギターのピックは、ファンの方からのプレゼントだそうです。
野上は勢い余ってピックを飛ばし、ギターの穴に落としてしまう事があり、「なんでじゃー」と、ウンザリしながらギターを逆さまにして振って出していたそうですが、このピックは天然素材のため、そんな事にならないので、頼れる相棒にしていました。

そして、本番中、共演者達も弾き語り中の野上を舞台袖で見守っていました。
彼の緊張も、本番に至るまでの過程も、見続けて来た同志達。
しくじらないように祈っていたことでしょう。
支えられての弾き語り。無事に成功したと言っていいでしょう。


ショーコの話

今回、最も多くの振付を覚える事になったショーコ

他のメンバーは過去の公演で踊ったダンスですから、振付を思い出す、という作業でしたが、ダンスシーンでの登場が少なかったショーコは、新たに覚えるところから始まりました。運動が得意でないのは、自他ともに認めるところです。

しかし、ショーコはがんばりました!
野上も感心するほど、たくさんの振付をマスターしました。
あ、いや、マスターしたと言っても、そんなにカッコよく踊れませんよ。
でも、猿面のダンスはそれでいいんだと、シノダは言っています。

ダンサーじゃない。
技術的に上手いダンスが見たいなら、そっちを見に行ってくれればいい。
猿面のダンスは、上手い下手の問題ではなく、懸命に踊れば猿面ならではの、芝居のつもりのダンスとして成立するものであり、何よりお客様と一緒に楽しめるのがいいのだ、との事です。
その点で、及第点を獲得した今回のショーコ。
彼女は役者ではなく裏方として活躍する事もありますが、どんな役割でも楽しんでやれる人です。
皆と一緒に芝居作りが出来る事が楽しいので、そのためのチャレンジには意欲的に取り組みます。

第18回公演「ふたりの時間」の、このダンスにも挑戦しました。


シズカさんの話

今回は、ついたての裏でノートパソコンを操作して音出ししていました。

出演者の中でパソコン操作に最も長けていて、このパソコンの持ち主である野上に音響をやってもらえば、それはそれは安心ですが、彼は大忙しで動き回ります。
音響をやっている暇はありません。
じゃあ、誰が音響やる?となったら…

段取りの無事な遂行に定評のあるシズカさん。が、いいかな?
何事にも(代表、ショーコに比べれば)冷静に対応できると評価されているシズカさん。なら、出来るよね?

「キャー!大変!!アタシ、どうすればいいの-!」という事態でも、リアクションが極小で目立ちにくいシズカさん。
に、やってもらうしかないな。
と、いう事で、音響係は、もうシズカさんしか考えられませんでした。
音響に決定する以前から、率先して音出しをしていたシズカさん。
周りを見回せば、「あたしがやるしかない」と、指名される前から思っていたに違いありません。

稽古中、パソコン画面に見た事のない表示が出るたびに、怖がって野上に助けを求めていましたが、本番では、皆の期待通り、踊って歌っている合間に、きっちり音響係をやり遂げたシズカさんでした。

この曲ではセンター、メインボーカルを務めました。
女優陣の中では、一番踊れるシズカさん。小柄でキリキリ動けます。野上とペアで激しいダンスを踊れるのは彼女だけです。


15:00 開演

ふれあいSHOW、最終公演です


いつもの公演と違うロケーションにインスピレーションが湧き上がった舞台監督。
面白い写真を撮ってくれました。
こちら、最終公演直後、美術館の外観ですが、

窓をよく見ると…

いたいた~、猿面達です

ワークショップルームの窓から、地上の歩道にいる舞台監督を見ています。

今回も、舞台監督としての仕事以外に、たくさんの写真を撮り、ビデオ撮影をし、会場係としても対応し、大忙しだった舞台監督。

エレベーターの中で自撮りしている風景です。


野上の話

今回は野上にとって、最も厳しい公演だったそうです。
前述の弾き語りのプレッシャーのみならず、怪我との闘いがありました。

野上がフクラハギを肉離れした件を稽古風景に載せました。
あの時は軽傷で、もうほぼ治っている状態だとご報告しました。が、実はその記事の直後に同じ箇所を本格的に肉離れしてしまいました。
8月終わり頃の事でした。
軽く肉離れして治りかかっていたところを、悪条件が重なったのか再断裂してしまい、本番までに完治するか危ぶまれる状態になりました。
公演前の一大事でした。
日常生活の動きだけなら、2週間もすれば問題ないほどに治ると予測できましたが、激しい動きが出来るようになるには、少なくとも1ヶ月以上かかるであろう怪我でした。
しかも、肉離れは3ヶ月以内に再び断裂する可能性があるそうで、稽古で動いたがために再度肉離れ、という恐れがありました。
もう一度断裂した場合、歩行にも苦労するほどになりますから、本番に間に合いません。
確実に治すために、動きたくてもひたすら我慢だった野上。
右足は、床にカカトがつけない状態だったため、稽古場での動きを負担のないものに留めていました。
せっかく公演が出来る事になり、お客様に元気な猿面をお見せしたい、出来る限りの動きをしたい、と、筋トレも増やして準備してきた野上にとって、動けない、動けるようになるのか、間に合うのかという不安と闘う事になったのは、まさかの事態であり、辛い状況でした。

今回のショーは、野上が動けないと話になりません。
なんとしても間に合わせる、と、本番に照準を合わせて、調整を続けました。
ジャンプの振付が多いのも怪我を招くことになると用心し、右フクラハギの負担になるジャンプはしない振付に変更しました。
注意していても、ふとした瞬間に傷みが出て、また切れるのではないかという恐怖と闘う日々を過ごしました。
右足をかばうせいで、左足にも張りが出て…、と、悪い事が重なり、試練は続きました。

野上は、治すために良いと思う事は、全て取り入れ、毎朝毎晩ケアを続けました。

そして、本番では、こんな動きも、

こんな動きも、問題なく出来ました。

怪我に苦しむ野上を支えてくれたのは、共演者達でした。

しばらく動けないとわかっていても、半分本気で
「まだ動いちゃダメ?動けるか試したい」
と、ダダをこねる野上に、メンバー達は、母のように姉のように、
「まだダメ。無理をしないで今日は様子を見ましょう」
と、厳しく優しく励まし続けました。
ショーコは、稽古の帰り際、野上の大荷物を車まで運ぶ手伝いを、最後の稽古日まで続けました。

逸る野上を、
「今週は軽く動いて、大丈夫だったら来週はもう少し動いて…に、しましょ。きっと動けるようになるから」と、諫める女優さん達。

怪我の状況を把握している野上だからこそ、本番までにどこまで動けるようになるかなど、誰にもわからない事だと知っていました。
表面から傷の治り具合が見えるわけではないし、痛みがないから治ったと思って(競技)復帰すると、まだ治っておらず断裂を繰り返すのが肉離れの厄介なところです。
メンバーが「大丈夫」と言っても、そう断言できる根拠などありません。
言っている本人達も、それをわかった上で励ましていたのでしょう。
だとしても、
「大丈夫!きっとショーでは動けるから!」
そう言い切ってもらう事が、野上にとってはありがたい薬になりました。
野上と一緒になって不安になるのではなく、野上の不安を明るく吹き飛ばしてくれたメンバー達が彼の気持ちを楽にしました。
「皆が大丈夫って言ってるから、大丈夫だ」と、思えたそうです。
野上に力を与えたのは、治ると強く思わせてくれる彼女達の正体不明の図太さで、根拠があろうが無かろうが、そんな事は関係ありませんでした。

ようやくまともに動けるようになったのは、本番3週間前の稽古でした。稽古場での稽古は3回しか残っていませんでした。 野上は、本番までの間、自宅で一人猿面ショーを通し稽古していたそうです。
お越しくださるお客様はもちろん、ショーを成功させて、ここまで励ましてくれたメンバー達に喜んでもらいたい、と、ギリギリまで精度を上げようとしました。出番をたくさんもらっている自分が背負えるだけは背負うつもりで公演に備えました。

ゲネで初めてショーを観た舞台監督が、あんなに動きっぱなしで大丈夫なのか、と、野上を案ずるほどの運動量でした。

土曜日は、ゲネと本番2回で計3回歌って踊りました。
舞台監督は、
「明日もやるの?身体、大丈夫か?」
と、本気で心配していましたが、もちろん日曜日もやりました。

無事に、無傷で、全公演を終える事ができました。

終演直後、お客様をお見送りする時は、お風呂上りみたいになっていた野上。
最も厳しい公演でしたが、最も仲間に助けてもらい、ありがたさを感じた公演でもありました。
調整が成功したのは、皆のおかげです。


ショーの締め括りの曲は、皆が大好きな忍者ソングです。
稽古風景にありましたが、丸ちゃんも、久里子さんも、NANAさんも
登場して賑やかにお届けしました。

初日の準備中に、今覚えて、と、言われて振付を覚える事になったNANAさん。
若いからすぐに覚えるだろ、と、雑に判断され、野上の指導で練習開始。
丸ちゃんと久里子さんは、復習も兼ねて一緒に練習しました。
楽しく、ノリのいい曲なので、本番では出演者もお客様も、笑顔がたくさん並びました。


公演終了!!

ありがとうございました!!猿面達はとても楽しかったです!!


恒例の、バラシ直前の記念撮影
今回は、役者は後列、スタッフさん前列で撮影しました。皆、ありがとう!!
会えて嬉しかったです!!


2022.11.6 16:21


公演後記

【出演者】

田中綾子

劇団代表・田中綾子

猿面ふれあいショー、足をお運びいただき、ありがとうございました。
来ることが出来なかった方々からもメッセージを頂いたり、今までお話したことのなかったお客様とお話ができたり、喜びが盛りだくさんの公演でした。
ありがとうございました。
今回の公演でも、個人的にはいろんな失敗や反省があります。

ですが公演後記では、この公演をしたことで強く思ったことを書こうと思います。
今回の猿面ふれあいショーは、芝居の公演ではないのに、たくさんのお客様が来てくださいました。
普段稽古に来れないメンバーも、朝早くから公演のために集まってくれました。
個人的にも、団員に支えられた公演でした。
猿面を応援してくださり、待っていてくださるお客様がいます。
公演に向けて一緒に歩む仲間がいます。
とてもありがたい存在だと、改めて身に沁みています。
本当にありがとうございます。

劇団猿面は、お客様がいる限り、仲間がいる限り、これからも活動し続けます。
今後ともよろしくお願いいたします。
次回公演「星影さやかにさやか」でお会いできるのを楽しみにしています。
最後に、こんな思いになれた公演を企画してくれた、しのだ氏に感謝します。
ありがとうございました!

2022.11.21


芝崎シズカ

芝崎シズカ

長いお休みでした。
でもやっと、やっと、公演でお客様にお会いできる日がやってきました。
心地よい緊張の中、始まった猿面ふれあいSHOWは、お客様の笑顔と猿面たちの笑顔で、ものすごいパワーを内包しているようでした。
どんな困難にも負けない、そんな力を感じました。

ああ、大丈夫、私たちはまた劇場で会える、と、そう確信することができました。
そして何よりとにかく楽しかった!
本当にありがとうございます。
そう思わせてくれたお客様に、猿面の仲間に、今はただ感謝を伝えたいです。

公演を終えて、お洗濯をした衣装が日当たりの良い窓際でキラキラ光っています。
夢を見るようにそれを眺めながら、次は芝居で!劇場で!と私の心は静かに闘志を燃やしているのです。

2022.11.14


山田しょうこ

山田しょうこ

皆さま ご来場ありがとうございました。

楽しかったなぁ。終わってしまったけど、終わった淋しさよりも 満足感でいっぱい。久しぶりにお客様にお会いできて 嬉しかった。
次回公演はもっと楽しいんだろうなぁ。

・・でも、時間が経ち 筋肉痛がよくなってくると共に 淋しさもジワジワと忍び寄ってくる・・・

2022.11.10


野上竜司

野上竜司

ご来場ありがとうございました

足の負傷で仲間達に心配をかけ、助けてもらいました。
皆は、僕の危なっかしい弾き語りを、いつも舞台袖で応援してくれました。
おかげさまで無事に終える事ができました。ありがとうございました!

ショーのラスト、僕の隣で、お客様に向けて挨拶している代表を見ると、毎公演、涙ぐんでいました。
きっと嬉しかったんだと思います。
僕も嬉しかったです。
たくさんの温かい拍手を、ありがとうございます!

次回公演、劇場でお待ちしています! 

2022.11.21


【スタッフ】

丸 穣大

丸 穣大

お忙しい中ご来場いただきましてありがとうございました。
猿面好きな方々にあたたかく見守られた「猿面ふれあいSHOW」は盛会のうちに終了することができたなと思っています。
私も久しぶりに公演に参加することができ楽しませてもらいました。

また皆様にお会いできること楽しみにしております。

今後とも猿面をどうぞよろしくお願い致します。

2022.11.21


桜 久里子

桜 久里子

皆様お久しぶりです、久里子です。

私、近年多忙により、猿面の活動に参加できませんでした。が今年、ふれあいショーを開催すると聞いてソワソワ、ドキドキとても楽しみにしていました。
メンバーの顔を見て涙ぐみ、猿面のジャージに袖を通すだけでとても嬉しかったです。

メンバーの歌と踊りを見ていると、その時その時の公演が頭をよぎりました。
稽古大変だったな、演出家に怒られたなと走馬燈のように懐かしい場面が頭をめぐりました。
ふれあいショーは演者とお客様が近いせいもあり、今までとは違った盛り上がりで、それもまた感動致しました。
来年こそは舞台公演が実現しますように願うばかりです。その時は私も何か協力するつもりです。
皆様、ありがとうございました。

2022.11.19


Nana

Nana

ここ数年、スタッフとして、そして一ファンとして猿面の公演を楽しみにしていました。
いつものように舞台で、とはいきませんでしたが、受付としていつも観に来てくださる皆様の元気なお姿を見れたことが本当に嬉しかったです。
また来年は舞台裏から、皆様に猿面の芝居をお届けするお手伝いが出来ることを楽しみにしています。
ご来場頂きました皆様、ありがとうございました!

2022/11/20


構成・演出 しのだ 冬吾

第20.5回公演「猿面ふれあいSHOW」にご来場いただきました皆さま、まことにありがとうございました。
また、公演にお力を貸してくださった皆さま、ありがとうございました。

僕が「猿面ふれあいSHOW」の企画を思いついたのは2020年でした。
件のウイルスの流行により、2020年秋に予定していた公演が出来ないと決まった頃です。
誰もが行動を制限され、我慢を強いられ、これまでの生活が一変する事態が続き、仕方がない事だ、命を脅かすと言われれば芝居どころではない、収束を待つしかない、と、冷静に受け止める一方で、僕の中に、ある、”猛り”のようなものが湧き上がりました。
「邪魔をするな」と、思いました。
同時に、「こんな事に負けてたまるか」と、思いました。
見えない敵への、子供じみた喧嘩腰に過ぎませんが、この胸のたぎりは一時的ではありませんでした。
このまま何もせずにいては、これまで培ってきた猿面のすべてが鈍ってしまう、大事な時間を奪われ続けるのを食い止める手立てはないものかと考えました。

この当時の劇場は、入場者数の制限がありましたが、少人数であれば公演可能でした。
稽古中の「星影さやかにさやか」は、台風の影響で楽日公演しか出来ず、悔しい思いを残した作品ですので、制限のある状況では公演したくありませんでした。
歌とダンスだけの小品なら、ご来場になる方は少ないのではないか、それなら人数制限があっても公演ができるのはないか、と、団員達に相談しました。
そんなショーをやったところで、ご来場くださるとしたら、それは筋金入りの猿面好きの方だけだろう、果たしてそこまで猿面に興味を持っていてくださる方は存在するのか、どなたもお見えにならないかも知れない、と、覚悟した上での企画だと説明しました。
僕は役者達を錆び付かせないため、なんとかして舞台の上に立たせたかったのです。
動員数はさておき、舞台に立って演じるという行為を彼らにして貰う事が目的でした。
何かしたい気持ちは同じでしたから、団員から反対意見はありませんでした。「星影さやかにさやか」と並行して、ショーのための練習を始める事になりました。

しかし、ウイルスは、その後、幾度も幾度も感染の大波を繰り返し、公演する機会を流し、ショーの公演すら出来ない状況が2年に及びました。
毎年の公演は、僕らの活動の成果となり、お客様に観ていただく事で劇の世界を共有する幸せを感じる、猿面の「生きがい」です。
それを奪われている期間でも、僕らは稽古を続けて来ました。
いつ出来るともわからない公演に向けて、繰り返し繰り返し同じ脚本の稽古をしています。
稽古が出来ればそれだけでも幸せ、と、思えるのは猿面のいいところです。そんな団員達を頼もしく思います。
ですが、2022年、今年も何もせずに待ち続けるわけに行かない、今年こそ何かやる、何とかして実現する、と、僕は決めていました。
演者もマスク着用しなければならないという規制が解けない劇場を諦め、千葉市美術館での公演に踏み切りました。
役者達は、舞台上での反射神経や勘が以前のように働くのか心配になるほどの長い間、舞台に立っていませんでしたので、宣伝の折にも”舞台人的リハビリ”を兼ねた公演だとご案内しました。
その上、”ご入場は猿面好きの方限定”と載せた事に関しては、スタッフ団員から「そんな宣伝でいいのか、まるでご入場を拒んでいるようだ」と、疑問の声も挙がりました。
確かに今回は、宣伝する気があるのかないのか、わからないような消極的宣伝活動でした。
当劇団の歌やダンスを恥じるわけではありませんが、弁えは持ち合わせています。
芝居に合わせた歌やダンスを切り取ってお届けするのは、意味合いが薄まり、本来のお見せしたいシーンではなくなりますし、衣装や大道具も大がかりには出来ません。
そうした事から、大口を開けて宣伝するような図々しい真似はできませんでしたし、本当に猿面を好きな方々とこっそり楽しむ場にできれば、それだけで良かったので、あのような宣伝になりました。

何人のお客様が来てくださるのか、混雑するのか、ガラガラなのか、まったく読めないまま初日を迎えました。
お客様の反応も、どうなるかわからない劇団初のショー公演でしたが、おかげさまで、たくさんのお客様にご来場いただきました。
劇場での公演に比べれば少ない動員数でしたが、僕らが思っていたより多く、充分過ぎるほどでした。
猿面を忘れずに待っていてくださった方が、こんなにも居てくださり、団員一同、感激しております。
マスクの目元が笑顔のお客様から、ショーの間中、大きな手拍子や拍手を送っていただきました。
僕らが実現したかった「ふれあいSHOW」が目の前で形になったのは、近年にない嬉しい瞬間でした。
応援のお言葉や次回への期待を籠めたご感想をたくさん頂戴し、劇団の活動を続けていいのだと、背中を押していただきました。
繰り返しになりますが、今回、ご来場いただきました皆さま、本当にありがとうございます。
皆さまによって、猿面達が得た力は、大きな大きな勇気になりました。

公演が出来なくなってからの期間、猿面のメンバー達にも色々な事があり、私生活に変化が生じた者もいます。
それぞれ、悩みや背負うものがあったとしても、稽古場に来れば仲間がいます。
仲間と過ごす時間は、昔から何も変わらない、お腹を抱えて笑い転げる事も珍しくない、安心できる時間です。
また、公演の際には、なつかしい顔ぶれも集まってくれ、支えてくれました。
実のところ、公演を終えた翌朝、ショーをやったのは良かったのだろうか、と僕は寝床の中で考えていました。
ご好評をいただき、成功したと言っていいはずなのに、僕の思いつきによって、役者達に負担を強いたのではないか、皆は本心から楽しかったのだろうかと 、いやな翳がよぎりました。僕は、かけがえのない仲間達と同じ景色が見えていたか、独りよがりではなかったかと自問し、澱んだ苦さを味わっていました。
ですが、その心配は無用だったと教えてくれたのは役者達からのメールでした。
ショーをやって良かった、企画してくれてありがとう、楽しかった、と、弾むような明るい言葉が並んでいました。
彼らを喜ばせる事が出来たと知り、やって良かった、と、僕が喜ばせてもらいました。

こんな世情になった事で、よりくっきりと、芸術の意義が浮かび上がります。
美術館という芸術の基地が今回の公演場所に決まった事は、巡り合わせだったように感じます。
我々の劇団の活動は、芸術というにはおこがましいですが、演劇という芸術の末端にいると言えるのであれば、端っこの演劇人として、その火を絶やすまい、と、強く思っています。
この先の状況次第では、商業演劇でも休演や延期を余儀なくされる事がまだ続くのかもしれません。
ですが、営利を目的としない猿面だからこそ、耐え忍び、続けて行ける強味があると考えています。
来年は「星影さやかにさやか」の劇の世界をお届けするのだと、僕は決めています。
先がどうなるかわからないのは、この3年でイヤというほど味わいました。
どうなるか、など知った事ではありません。どうするのか、を考えるのが僕の仕事です。
劇団猿面は、来年、劇場で芝居をお見せするのです。
来年も、再来年も、その先も、僕らは僕らがつくりたい芝居、お客様と一緒につくりたい劇の世界を諦めません。
どんな邪魔が入ったとしてもです。

第21回公演「星影さやかにさやか」へのご来場を、心よりお待ち申し上げております。
今後も劇団猿面の歩む道に、お付き合いいただけましたら幸いです。

しのだ サイン
2022.11.22


舞台写真


最後までご覧いただきましてありがとうございました!

来年、劇場でお会いしましょう!!
劇団猿面一同


劇団猿面劇団猿面「猿面ふれあいSHOW」劇場風景—番外編
劇場風景の動画版です。公演準備中の猿面たちの様子や、舞台裏・舞台映像がご覧いただけます。

画像をクリックするとYouTubeのページでご覧いただけます。


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